「池江璃花子」叩きで思い出す五輪アイドルたち、世間はなぜ悲劇のヒロインを求めるのか【宝泉薫】
■福原愛は悲劇のヒロインか? 千葉すずの本音と痛快さとは?
とはいえ、現在、卓球の福原愛にもこれに近い問題が起きているように、こうした闇落ちはわりとありがちなのかもしれない。むしろ、異例なのは千葉すずのケースだ。競泳でメダルを期待されながら、全敗に終わったあと「ニュースステーション」(テレビ朝日系)のインタビューで彼女は本音をぶちまけた。
「オリンピックは楽しむつもりで出たんで」「そんなにメダルというなら自分でやればいいじゃないですか」「メダルメダルって、日本の人はメダルキチガイみたい」
そんな姿に世間は面食らった。その後、日本水連のドン・古橋広之進ともバトルしたように、彼女は悲劇のヒロインどころか、じつは五輪アイドルには珍しいヒールキャラだったのだ。
この面食らった構図を説明するために、二千年前の話をしたい。ローマ帝国が作った娯楽施設・コロッセウムの話だ。剣闘士と猛獣を命がけで戦わせ、何百何千の屍と引き換えに熱狂がもたらされた。五輪ファンの心理は、そこに集まった観客にちょっと通じるものがある。剣闘士が日本選手で、猛獣が外国人のライバル、あるいは「オリンピックという魔物」というわけだ。
千葉の場合、剣闘士だと思っていたら、いきなり猛獣と化し、ファンに牙をむいてきたのである。
ただ、そんなヒールぶりが面白がられたのも、容姿がアイドル的だったからだろう。闇落ちが注目されるには、そこそこの美人でなくてはならない。同じ水泳でも「めっちゃ悔しい」の田島寧子みたいだと盛り上がりも今ひとつ。何を思ったか、女優になると言い出し、朝ドラなどに出演したもののすぐに消えてしまった。
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